「SiNQ感想文コンテスト」投稿：「時間」

時間。いつも漠然と意識していたテーマであった。今回このテーマについて読ませて頂き、とても感慨深い内容と多くの気付きがあり、時間について、更には人生について真剣に向き合うことができた。
人生において、絶対という言葉はほとんどないと思う。しかし、人は必ず死ぬことは間違いなく絶対である。32年間看護師として人の生死に関わりながらいつも思うことは、時間とは何か？時間はどこからどこまで続くのか？人の人生を考えたとき、両親、そのまた両親といった先祖。また、これから生まれるであろう子孫。脈々と引き継がれる命（壮大な時間）の連鎖。一人の患者様が今まさに命を閉じようとしている場面において、いつも思ったことは、この方の人生はどんな人生だったのだろうか？多くの人の死を看取ってきたが、死ぬ間際になってよく聞く言葉がある。それは、やりたかったことを出来なかった後悔の言葉である。呼吸が浅くゆっくりになる患者様の傍に付き添いながら、この方は何をしたかったのか？子供の頃はどんな少年で、どんな夢があったのか？いつ夢を諦めてしまったのだろうか？眼の前の一人の老人の一生に想いを巡らせてみる。人の一生はあっという間で儚いものだなぁとさえ思えてくる。
そんなことを思い出しながら、時間と言うテーマについて、いろいろな視点から考えるきっかけを頂いた。私はいままで、時間をどのくらい浪費していただろうか？具体的に計算までしたことはなかった。私の残りの時間という財産は計算すると10,220日残されている。毎年春になると「あと何回桜が見れるだろうか？」と桜を見上げ、心地よい風を受けながら春の陽射しと共に桜の優しいピンク色を目にやきつける。その度に残された時間という財産をどう活かすか、どうしていきたいか考えずにはいられない。
これまで「緊急で重要ではないもの」にどのくらい多くの時間を費やしてきたのだろうか？正に時間の浪費であった。
これからは自分が好きなことをして生きるための投資の時間に切り替えて行こうと思う。
「人生は競争ではなく、最大の目的は楽しい毎日を送ること。自分にとって気持ちのいい時間の流れを知り、自分らしく前に進んでいく。」私にとって目からウロコのメッセージだった。
また、「物理的時間」と「心理的時間」の概念は衝撃的だった。子供の頃、「おはよう」と目を覚まして「おやすみなさい」と布団に入るまでたくさんの経験をしたものだ。要するに、経験によって時間が圧縮される。朝ごはんを早々に済ませ、友達を誘ってザリガニ釣り。ザリガニのハサミが糸で吊るしたスルメを挟む。しっかり挟んだことを確認したら、息を殺しながらそ～っと引き上げる。そうすると、ザリガニが離すまいと釣り上げられる。あのときの充実感や興奮は何物にも代えがたい。たくさん釣れたと喜んで、外でゴミ焼き（昔は許可されていた）をしていた友達のおじさんに自慢したところ、焼いて食べられてしまった（笑）びっくりしたのと、ショックでちょっとへこんだが、それもすぐに忘れ、今度は自転車で手放し運転の練習。転んで両膝を擦りむけ血だらけになる。痛くてちょっと泣いたが、近所のおばさんに絆創膏を貼ってもらい、気を取り直し性懲りもなくまた手放しの練習。
あっという間に夕方となり、祖母に迎えに来られる。まだまだ遊んでいたかったが、しぶしぶ家に帰ると、大好きなコロッケでごはんを２膳完食してご機嫌＆大満足。
日曜日のサザエさんを見ていると、母にお風呂に入って寝なさいと言われ、お風呂に入る。膝の傷が飛び上がるほど痛かった。そして、パジャマを着て布団に入り３秒で夢の中。思い返せば、なんと充実した日々だったか。実にたくさんの経験や感情を味わっている。同じ物理的時間の中でも心理的時間の価値は高く、とても豊かな時間だった。
今、人生の折返し地点を過ぎて生き方を変えている。昨年、30年間働いてきた職場を退職した。それは、これ以上時間を浪費することをやめ、残りの時間を今までの30年分も充実させワクワク楽しみたいと思ったからだ。物理的時間は変えられなくても、心理的時間は志や意識によっていくらでも充実させ圧縮出来る。もっと言えば、夢中になり、今を生きれば、時間さえ止められると思う。そのために、一瞬一瞬を大切に、夢中になり、今を生きて行こうと思う。
この原稿は東京からの帰りの新幹線の中で書いている。車窓からの夕焼け空を見ながら、この平等に与えられた「時間」が愛おしく大切に思える自分がいた。
そんな思いや気付きを与えてもらえたことに深く感謝します。

#感想文コンテスト